2018年度分③

2018.11.10(土)


川崎支部 第一回パネルディスカッション(ご報告)


                   川崎支部 支部長 赤津武雄


2018.11.10(土)の第一回パネルディスカッションは二子玉川の夢キャンパスで開催し、基調講演内容は「認知症と地域とのつながり」で、講演者は株式会社青空訪問介護及びデイサービスの元代表 親川とみこ氏及び「とどろき地域包括支援センター」長の北川大氏です。

「ちょっとおかしいな」と気付き始めるよりもかなり前に、前兆が見られ始め、認知症は一度発症すると完治は難しく、認知症の全長は嗅覚の衰えから始まります。発症時期の10~20年前から嗅覚が衰えると言われ、早い方は40代から衰えるのです。

最初は「どこか変じゃない?」と感じますが、叱責したり、間違いを正すと、本人は屈辱感を持ったり、家族に対する敵意を抱かせることにもなりかねません。この様な偏見や知識不足にならない様に、皆様の周辺から正しい知識を身につける一助がこのパネルディスカッションです。

主なポイントは下記です。


① 高齢化社会から超高齢化社会へ進み、2015年問題が発生。団塊の世代が全て75歳へ。
② 社会保険給付費の変化は、介護費は、10.7兆円(2018年)→14.6兆円へ(2025年)、
     医療費は39.2兆円(2018年(36%増))→48.7兆円(2025年)(24%増)へ。
③ 認知症者数の変化は、150万人(2007年)→345万人(当初の見込みは250万人)
     →470万人の見込み(実際はどの位か?)
④ 認知症の原因疾患は70~100程度で、認知症は症状であり病名ではない。
⑤ 日本尊厳死協会が1995年に行ったアンケートでは、認知症を尊厳死に加えるべき方が
     85%で、家族や「周囲に迷惑をかけたくない」理由が多い。認知症への恐れ、自立性
     が奪われる理由もある。
⑥  認知症には嗅覚症状と周辺症状がある。
⑦  一般者の疑問は、どこに相談すれば良いかが分からないことが大きい。
     とどろき地域包括支援センターではワンストップ(この一回の質問で終了し、
     他へのたらい回しはしない)とし、顔が見えるケアマネージャー、医者、ヘルパー等を
     把握しているので、適切な支援が出来る。ケアマネージャーと意見がまとまらない
     場合は、別の担当者を選定出来る。
⑧  少子高齢化でのひとで不足な状態が続いている。介護施設の空きベッドは有るが
     介護士数が少ない為に、数年の順番待ちになっている。例えば10年程度勤務した
     介護士でも月20万円(幼稚園・保育園では15万円程度)なので、両親を敬う
     東南アジア出身者の活用が促進されるとよい。現在は賃金と労働時間がネックである。
⑨  アルツハイマー病を患っても認知症にならない方は、きちっとした生き方、社会関係
     とのつながりを持っている方である。
⑩  今後は孤独死が増加する見込みだが、孤立死(誰かにすがる術が無くなる。)が適切
     な呼び方である。
⑪  毎日の様に日記をつけている方は、脳の萎縮が始まっても、アルツハイマー病に
      なっても認知症には罹患していなかった。
⑫  社会につながりたい、社会が見守っていることで、認知症の症状が改善する。
⑬  地域包括支援センターへの意見反映には地域の方からの声がかなり有効で、
      役所部署間からの意見は効果が低い。
⑭  今後は成功体験を積んだ専門職ではない、アマチュアからのケアが重要である。
⑮  とどろき地域包括支援センターではコミュニティカフェ、二ケ領ウォーキング等
      6項目の地域活動を行っている。

(筆者補足)
①  良い介護サービスを受けられるかどうかは、得ている情報次第で決まる。
      何も知らないで介護に臨むと、余計な負担と心身の健康を損ねる。
②  要介護の家族がいる人の約4割は、介護は想定外と思っていた。
③  厚生労働省によると、要介護になった原因の第一位は一昨年から認知症だが、
     親と別居等で年に1~2度程度しか会わない方は、その発症には気付き難い。
     1人暮らしの親が認知症だった例が増加している。
④  在宅介護か施設介護を選択する際に、「特別養護老人ホーム」は人気が高く、
     入所迄の平均期間は1年3か月程になっている。希望しても1年以上は在宅介護の
     傾向がある。
⑤  目に見える光景だけが真実ではない。例えば、排せつの介助は本人の自尊心
   (自分を大切する心)を傷付けることがある。人前でおむつの交換を言わない等。
⑥  医療保険とは異なり介護保険でサービスを使用するには、「要介護認定」の手続き
      が必要である。本人の状態を判定し、要介護や要支援の認定が終わるまで約1か月程。
⑦  ヘルパーには頼めることと頼めないことがあり、「種に家族が使う部屋の掃除」、
    「本人以外(家族)のための調理」等は原則、介護保険のサービス適用外。頼む側も
     良好な関係を築くことが重要である。
⑧ 「地域包括支援センター」では介護の相談の他、ケアマネージャーが所属する
    「在宅介護支援事業所」も紹介をする。
⑨   ケアマネは必要なサービスを見極め、介護の計画を作り、状況をチェックする
      専門職です。迷ったら、金城の方の口コミも参考になります。
⑩   病院ではなく自宅で「医療的ケア」を受ける方が増加している現在、訪問看護師の
       質も重要なので、良心的な訪問看護師を探すと良い。
⑪   介護者らが集う「介護者の会」で悩みを話し合うことも大切で、仲間意識が自身の
      励みになる。
⑫   最良の備えは、親が元気なうちに「家族会議」で介護の在り方を相談すること
      である。悔いのない介護にする第一歩である。
⑬   参考本例は「親の介護でパニックになる前に読む本」(結城康博著 講談社)
      である。
⑭  厚生労働省では、高齢者人口が全体の約1/3になる2030年には、約47万人が
     病院でも施設でも最期を迎えられない「看取り難民」に可能性があると警告
     している。

次回も開催しますので、是非参加して下さいね。

(親川とみこ氏-超高齢社会の説明中)

 

(北川大氏-とどろき包括支援センターの説明中)