東京都市大学 校友会 都市 vol.10 2023 March
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2東京都市大学 学長東京都市大学校友会 顧問三木千壽 大学は2020年よりコロナ禍に振り回されてきました。当初、講義は全面的にオンラインに変えましたが、2021年11月より対面に戻しました。しかし、オンラインで受講することも可能とし、講義はすべて録画され、ハイブリッド形式とも言えます。この間、様々なメディアを活用しての講義を実施してきましたが、その長所も短所も見えてきました。公開されている講義録画や、教育フロントランナー受賞者の講義を見せていただくと、講義方法はどんどん改善されており、今後の展開が大変楽しみです。いわゆるメディアを活用した授業は、これからの大学教育の重要な構成要素となってくると考えられます。 最近、この分野での大きな動きは、MOOCs.(Massive Open Online Courses)です。これは、e-baseの大規模で開かれた講義であり、修了証明を得ることができるプログラムです。これまで様々なプログラムが提供されていますが、その中でも、世界のトップクラスの大学・機関によるCoursera(コーセラ)とedX(エデックス)が有名です。この2つのプラットフォームへの登録者数合計は3,000万人以上に達しているとのことです。東大は2013年9月よりCourseraで2コースを提供して以降、2021年4月現在で全19コース(Coursera 9コース、edX 10コース)を提供しているそうです。 日本では2013年に設立されたJMOOCsが代表的なプラットフォームであり、本学は2021年、JMOOCsの会員となりました。今後、講義を提供していく予定です。文部科学省からの公募事業などでは、JV-Campus(Japan Virtual Campus)を使うことが応募条件になっているものが多くあります。JV-Campusは、「オールジャパンで結成する国際的なオンライン教育プラットフォーム」であり、JMOOCsの国際版とも言えます。 世界的に目を開いてみると、新しい教育形態の大学がどんどん出現しています。その中でも、ミネルバ大学には関心を持っています。米国サンフランシスコに本部を置く大学であり、2012年9月に開校されています。ぜひ、インターネットで調べてみてください。 以下はインターネットから得られたミネルバ大学の情報です。・ 全寮制私立の総合大学であり、特定のキャンパスを有していない。・ 学生は4年間で世界7都市に移り住みながら、オンライン授業を受講する。・ 授業は1クラス19名を上限とする少数編成のセミナー形式であり、学生は一同に介して、教授の話を聞き、ディスカッションを行う。つまり、離れた場所にいる教授が、生徒の集まる教室に「チェックイン」する形式で講義が構成される。このようなオンライン講義のプラス面として、次のようなことが紹介されています。・ 講師のモニターには一人一人の表情、作業の手元がはっきり映り、やる気や理解度が手に取るようにわかる。・ 個人の発言時間を自動的に計測し、発言量のバランスも見ながらクラスを進行できる。・ 発言時間は成績に反映される。 ここで示されているミネルバ大学の講義は、オンラインでしか実現できない教育方法と言え、オンライン教育の弱点を見事に克服しています。今の技術からすれば、自動筆記、即時テキスト化、数値データ化も難しいことではありません。 教育へどのようにICTを活用して教育効果を高めるのか、そのカリキュラム構成などについて研究する必要があるのではないでしょうか。また、ICT導入に関して、教員の研修機会や支援体制、そのための専門的な部署とスタッフ、学生への支援体制、講義の評価システムの見直しなども気になるところです。 2023年4月、横浜キャンパスに「デザイン・データ科学部」を開設します。データを科学する「データサイエンス」を基盤にマネジメントとデザイン(構想力)の観点を加え、全く新しい学びを始動させます。技術がさらに高度化する「Society5.0」の社会を迎えるにあたり、ICT環境の整備・活用は極めて重要な局面にきています。海外と比較して日本の教育にはまだまだ課題があると言わざるをえません。コロナ禍は変わるチャンス、この先を見据え変革の好機と捉えて進んでまいりますので、今後も大学の動きにご注目いただければ幸いです。「大学の可能性」

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