都市 vol.11| 2東京都市大学 学長東京都市大学 校友会 顧問野城 智也三木千壽先生の後任として1月1日に学長に就任いたしました。私は、1991年4月~1998年3月まで、武蔵工業大学建築学科に助教授として勤務いたしました。その時代に、大学からいただいた様々な機会や、学生諸君と協働した研究は、その後の私の活動の源泉でもあり基盤でもあります。それだけに、学長の職務を通じて東京都市大学の持続可能性を高めることで、いただいたご恩に対する恩返しをしていきたいと考えております。具体的には、以下の二つのことに、一層取り組んでいく所存です。その一つは、継続的な能力構築への取組であり、もう一つは、都市を舞台としたイノベーションへの取組です。まず、継続的な能力構築への取組について。東京都市大学の卒業生の皆様は長い時間の中で社会・企業における声望・信頼を築き上げてきました。その声望・信頼が、新規卒業生の就職機会を高め、そうして就業した卒業生がそれぞれ業績を挙げてますます声望・信頼を高め、さらに新規卒業生の途を拓いていくという、正のスパイラル・プロセスが力強く継続・循環してきました。これは、校友会の皆様のご努力の結晶・精華であり、あらためて御礼申し上げます。私は、この良き伝統が、さらに継続・発展するように、学長として教育の質の保証に注力して参りたいと考えています。しかし、一方で、こうした良き伝統に胡座をかいてはいられないとも認識しています。というのは、いま世界規模で、Game change ともいうべき大きな変化が起きていて、技術が陳腐化していく速度も速まっています。さらには、日本企業がかつて有していた、組織内での能力の再構築の機会は縮小しているように見られます。となれば、本学の卒業生はこれから、生涯にわたって、自らの能力を構築していく必要性があると考えられます。そこで、学部・大学院の教育においては、単にその時点で求められる専門技術・知識・能力を磨くだけでなく、「生涯にわたって、自ら学び、自ら考え、課題を定義し、自ら何かを生み出していく」能力を高めることも涵養して参りたいと思います。それとともに、東京都市大学が生涯にわたる能力構築のパートナーとなっていけるよう、社会人を対象とした、いわゆるリカレント教育・リスキリング教育などの能力再構築の機会を提供したいと考えています。五島育英会事務局の世田谷キャンパスへの移転に伴い、法人本部のあった渋谷の空間を再整備し、「渋谷キャンパス」と位置づけ、こうした社会人を対象としたプログラムを展開して参ります。校友会の皆様には、いまどのように切実な能力再構築のニーズがあるのか是非ご教示いただきたく、謹んでお願い申し上げる次第です。また、もし、皆様のニーズに即したプログラムが立ち上がった暁には、校友会の皆様が、個人単位で、あるいは組織・グループとしてご利用いただければ誠に幸いです。次に、都市を舞台としたイノベーションについて。日本では、イノベーションといえば、新たな科学技術が生み出され、その結果、新しい製品・システムが生み出され、世の中が塗り変えられていくという技術主導型のイノベーションに多くの焦点があてられてきました。しかし、例えば、スマートフォンが興したイノベーションは、よくよく振り返れば、スマートフォンを携帯電話ではなく様々なサービスの端末として再定義したこと、いわば、技術の革新ではなく、「新たな意味の創造」がなされ、それが新たな技術やシステムの創造を牽引したというプロセスを辿っています。そのプロセスには多くの人が巻き込まれるように関与しています。このように、現代イノベーションのもう一つの奔流は、様々な専門家や関係者があたかも神輿を担ぐように参画し、試しに作り、試しに使い、評価し、改良するという繰り返しのプロセスを辿っており、そのため多くの専門家や関係者が地理的に集積する都市を舞台に起こっています。東京都市大学は、立地からいっても、その名称からいっても、さらに構成員の多様性からいっても、都市を舞台としたイノベーションで存在感を発揮していける絶好の条件を備えています。私は、学長として、学生諸君の起業家精神を惹起していくこと、教員間の分野を超えた協働の機会を高めていくこと、そして、何よりも、革新が求められる課題を同定し、一緒に作り、使い、考え、何かを作り上げていく様々なパートナーとの連携を展開していくことによって東京都市大学が、都市を舞台としたイノベーションの回し手になっていくように尽力していきたいと考えております。校友会の皆様には、是非、この皆で神輿を担ぐイノベーションに様々な形でご参画ご支援をいただきたく、そのきっかけをどのように作り、ことを運んでいければよいか相談申し上げたいと考えています。就任早々、お願い事ばかりで恐縮ですが、東京都市大学の持続可能性を高めていくことに本意がありますので、その点をご理解いただきご支援ご指導を賜れれば誠に幸いです。「ご挨拶」
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