校友会 会報 12号 2025 March
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昨年、三木千壽先生の後任として、この欄で、学長就任の挨拶をさせていただいてから1年が経過いたしました。その挨拶のなかで、私は、次の二つの取組みを新たに始めることを申し上げました。- 継続的な能力構築、- 都市を舞台としたイノベーションこれらの新たな活動を展開していく場として、渋谷の五島育英会ビルの8階にTCU Shibuya PXU[パクス]というスペースが整備されました。その設計計画にあたっては、建築学科:堀場弘先生、小林茂雄先生にご指導いただきました。PXUは、社会と大学の交流の場です。その名称のPには社会(Public, People)、Xには交流・交わり(Crossing)、Uには大学(University, Us)という意味が込められています。さらには、Xには 社会と大学の間の何か(something between public and us)という意味も含めています。PXUでは、次のような活動を展開していく予定です。第一に、主として社会人を対象とした能力構築プログラムを企画・実施していくことで、イノベーションに寄与していける人材の育成を断続的に進めて参ります。まさに、PXUという場で、「継続的な能力構築」の活動を展開していくことになります。第二は、さまざまな様態の会合・組織機会を提供することで、既存の専門分野・産業領域区分や職域・役割分担を超えて、ステークホルダー間の新たなネットワークの構築・活性化を進めて参ります。こうしたネットワークは、多くの現代イノベーションの特徴であるオープンイノベーション、言い換えれば「皆で神輿を担ぐイノベーション」の基盤となります。まさに「都市を舞台に皆で神輿を担ぐイノベーション」の基盤がPXUという場で生まれ育まれていくことになります。PXUで展開していくこれらの活動に、校友会の皆様が参画・寄与いただくことは大歓迎です。「継続的な能力構築」については、既に、2024年秋より、東京都市大学デザイン・データ科学部が中心となってDXリテラシーからDX推進スキルの基礎までをカバーする体系的な学習内容を提供するリカレントプログラム「DX人材育成コース」を社会人を対象にPXUで開講しています。いま、あらゆる産業分野・職域で、新たな価値の創出や生産性の飛躍的向上のため、AIの利活用を含むDXの推進が求められていて、これに背を向けることは、企業の競争力の低下や、個人の活躍範囲の制約をまねくおそれが高まっています。しかし、実際に、DXを推進できる人材の不足は深刻です。それだけに、校友会の皆様にも、このプログラムをご活用いただければと考えております。また、都市工学科では2016年より、五島育英会ビル地階サテライト教室にて、社会基盤整備事業の国際的な市場・技術動向に関する知識を修得する大学院プログラム「社会基盤マネジメントリーダー育成プログラム」を実施してきましたが、同ビル8階のPXU に場所を移して展開していきます。海外プロジェクトにおいて、日本の建設業や製造業は、折角しっかりした技術力がありながら、契約管理を含むプロジェクト・マネジメントの能力が十分ではないために、損失を被るといった事例は決して少なくありません。こうした、誠に勿体ない状況を改善するために、プロジェクト・マネジメント能力の系統的な取得をした人材を育成していくことを目指しています。校友会の皆様にもご関心を持っていただければ幸いです。このように、能力再構築・能力の継続的構築に関わるプログラムが既に二つ立ち上がっていますが、私は、現代社会において新たな能力構築が切実に求められていることがらは、まだまだ多数存在すると考えています。実際、本稿執筆時点でも、いくつかのことがらについては、新たプログラムの企画を立案中です。昨年も申し上げましたが、校友会の皆様には、今どのような切実な能力再構築のニーズがあるのか是非ご教示いただき、できましたらご一緒に新たな能力構築プログラムを立案していきたいと考えております。「都市を舞台に皆で神輿を担ぐイノベーション」については、それぞれの担ぎ手がそれぞれの得意技を発揮しつつ、ひとまとまりの解決策(integrated solution)を生み出していく課題の特定・定義と、課題に即したチームづくりを進めています。いま、俎上に載っている課題の一つが、ヒト、ロボット、建築のドアが、お互いにぶつかることなく協調的に動く空間のマネジメントです。ヒトや、ロボットが近づいたら、それを認知してドアが自動的に開閉するというのは、生活者視点から見れば、ごく当たり前の所作です。しかし、その背後には、空間認識、ヒト・ロボットの動作認識、異種の組み込みシステムを搭載した人工物を一つのプログラムで制御することなどの課題が存在し、それらの課題を乗り越えて、ひとまとまりの解決策を生み出すには、建築、機械、ICTなど異なる分野の専門家が神輿の担ぎ手として連携できるチームづくりが不可欠です。この事例のように、PXUでどのような、ひとまとまりの解決策づくりに取り組むか、逐次アナウンスして参りますので、校友会の皆様からご覧になって、「これは」という取り組みがありましたら、是非、担ぎ手としてご参加ください。また、「こういう、ひとまとまりの解決策を創ろう!」というご提案も歓迎いたします。PXUをはじめ、東京都市大学の挑戦・取り組みにご理解を賜り、引き続きご支援にご指導を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。東京都市大学 学長東京都市大学 校友会 顧問野城 智也渋谷での新たな活動都市 vol.12| 2

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