緑土会ニュース
“超ガラパゴス化が進む日本の高速道路トンネルの安全性”
“超ガラパゴス化が進む日本の高速道路トンネルの安全性”
2016年11月
東京都市大学(武蔵工業大学)
工学部土木工学科 昭和42卒 太田 義和
略歴
1967年 武蔵工業大学工学部土木工学科卒業
(株)千代田コンサルタント入社。
(株)千代田コンサルタント入社。
主として海外業務全般および、道路トンネル安全計画を担当
2001年 太田技術事務所(OTA Engineering) を設立。
以来業務の大半を海外(欧州および東南アジア)の道路トンネル計画に従事。
以来業務の大半を海外(欧州および東南アジア)の道路トンネル計画に従事。
現在 日本トンネル技術協会ITA(国際トンネル地下空間協会)対応幹事会顧問
オーストリアグラーツ工科大学機械工学科国際科学委員会委員
ノルウエートンネル協会(NFF)国際科学技術委員(2017年度まで)
1 初めに
先般緑土会からのご依頼があり私自身の卒業以来の経過と現況および私の専門分野におけます日本と海外の状況につきまして主要な部分につきましてその概要を申し述べたいと思います。
道路トンネルは土木構造物の中でも、土木、建築、環境(大気、水質、騒音等、) 機械(空気力学、風力機械熱環境)、電気、運転挙動(人間工学、避難環境)、視環境等、構成要素が非常に多く、かつ全体が有機的に組織され始めて「道路トンネル」として機能いたします。
現在、単に空間を構築する土木的一面を捉えれば全世界的にほとんど技術力の大きな差はなく建設可能といってもよいでしょう。しかしながら、土木以外の分野を有機的に結合した「トンネルの質」として捉えると時代背景による進化と一方で社会的背景からの技術的停滞等国際的に議論の余地が多く残っています。残念ながら日本では地下空間について「総合的に議論する場」が存在いたしません。したがって日本の道路トンネルでは総合的にみて、技術的矛盾点も随所にみられます。
本稿では特に国際的安全感覚と計画手法とは顕著に異なり、しかも一般的にも誤解されていると思われる所謂「ガラパゴス化」について率直に概要を記述したいと思います。
2 長大道路トンネルの火災安全計画の傾向
トンネル内重大事故は世界各地で頻発しています。日本も例外ではありません。加えて日本の高速道路上を通行する大型貨物車の混入率は世界でも突出しています。例えばEU高速道路ネットワークでの大型車(10トン車相当以上)混入率は平均15%程度、多くても25%位でこの値を超えると列車輸送への転換が検討されます。
代表的事例 および主たる理由として、
✔ ゴットハルド鉄道トンネル(スイス) 2016年開通 全長57KM(複線双設隧道)
✔ ブレンナー鉄道トンネル(オーストリアーイタリア)全長54Km 施工中
日本の貨物輸送の特徴として大型車混入率の高さが挙げられます。深夜の幹線自動車道の大型車混入率が90%以上に達するような事例は海外には見られません。加えて運転手の労働条件が問題となってそれが事故原因につながっています。
日本では大型車よるグループ走行、特に前方車両の尾灯を後方車両が視認することによる運転疲労の軽減がトラックドライバーの間である種常識となっており、かつ、トラックの空気抵抗を利用した交通換気力(ピストン効果)による機械換気動力の低減効果の期待感もあり、道路管理者も車間規制については強い取り締まりがありません。しかしながらアルプスを通過する長大トンネルでは日本と大きく異なり、大型車相互の車間を十分に確保し、火災事故発生時の火災規模の増大を防止すべく、トンネル手前から交通管制をかけるのがスイスアウトバーンなどで実施されています。
✔ 自然破壊等からの環境保護
✔ 大型車事故による大規模火災の防止
✔ 輸送、エネルギー効率(地球温暖化防止効果)の向上
✔ 大型車のグループ走行は事故発生時に火災規模の増大につながり重大事故の
原因ともなるため真摯な対策が必要でしょう。
原因ともなるため真摯な対策が必要でしょう。
2-1 近年の重大事故
図1 ゴットハルドトンネル火災(対面通行、全長16400m)1)
図1は1999年10月に発生したスイス南部イタリアとの国境に近い全長16400mのゴットハルドトンネル火災状況です。大型車数台の大火災に発展し。トンネル天井版は崩落しました。
このトンネルはスイス、チューリッヒ、イタリアミラノ幹線のほぼ中間部に位置し欧州路線の中でも大型車混入率が特に高いことで知られています。この事故がこの路線に並行して走る青函トンネルを凌ぐ世界最長のゴットハルド鉄道トンネル(全長57km、2016年開通) の建設促進につながりました。その後、火災による天井版劣化のためと大排煙口設置のため全面的な改修がなされました。現在既設のトンネルに並行して新ゴットハルド道路トンネルの計画が進行しています。新トンネルは今年開通したゴットハルド鉄道トンネルでの貨物輸送の状況を勘案しながら近い将来建設が進められるようです。
図2は フランス-イタリア の国境に位置するモンブラントンネル内で2001年に大火災が発生いたしました。このトンネルはモンブラントンネル道路会社が経営する有料道路トンネルでスイスジュネーブ、フランスシャモニー、イタリアアオスタ渓谷に観光地に位置しています。このトンネルで火災後世界初の緊急車両として特殊装備をしたオートバイが、および小型工作車両が設置されました。
図2モンブラントンネル火災(対面通行、11800m)2)
台湾北部、雪山隧道(L= 12,900M. 2004年開通)で2012年5月5日、トンネル火災が発生しました。火災はトンネル出口から約500M内部で一般旅客バスがトンネル内徐行中の小型貨物車に追突、小型貨物車の乗員2名が死亡。火災黒煙が避難連絡坑経由で併設のサービストンネルに流入、数百名が黒煙吸引し負傷者を出しました。図3の右側に示す通り従流式換気方式では坑口から大気中に排出されます。このケースでは自然風の風向が隣坑口(北側)からの北風であったために反対側入口坑口からの再流入は防ぐことができました。もし自然風が南風であった場合は煙が安全空間まで侵入し二次災害が発生していたものと考えられます。私は火災直後に台湾当局から連絡を受け、火災発生から3日後台湾当局と現地管制室で率直な議論を交わしました。
当時の管制官は最善の管制業務を実行したと思われますが、火煙の制御を十分に行うことができませんでした。これは平常時から非常時のような突発的な事象変化に対する制御応答性の悪さがこの換気方式の持つ大きな問題点の一つで、かなり以前から、私から説明していた現象が現実のものとなりました。新規高速道路トンネルの計画にあたり、台湾、交通部、国道新建工程局ではこれ以降このトンネルの換気方式は全面的に撤廃しました。
図3 雪山隧道火災車道内および北側出口坑口3)
図4は至近な国内事例で今年3月に発生した山陽自動車道八本松トンネル(844M)での火災事故状況です。4)このトンネルは一方通行の双設トンネル十分な換気設備、避難路塔は設置されていませんでした。
図4 2016年3月17日 山陽自動車道 八本松トンネル(844M)火災事故4)
したがって事故発生によって瞬間的に交通が停止すると交通換気力より自然風力が卓越し、煙の制御が非常に困難となり吸煙による負傷者発生の要因となります。
2-2 トンネル火災安全設計のための火災規模
トンネル火災安全設計のための熱出力設定は根幹的問題ですが日本では道路トンネル火災の燃焼対象物が規定されていません。即ち計画にあたって「何が燃えるか?」が現在に至るまで議論されていませんし指針にも明記されていません。
車両本体および積荷が燃焼対象物であるのには自明の理ですが、
①危険物積載車両の通行については各国で規制があります。
②国際的議論の場で半ば常識化しているのは「全ての通行車両は化石燃料」を搭載している。
化石燃料は液体である。
化石燃料は液体である。
③安全計画上、化石燃料(液体)が車両搭載物質では特定の危険物を除き、最も熱出力が高い。
④化石燃料が何らかの理由で路面に拡散した場合、空気との単位接触面積での熱出力は
ほぼ2MW/m2となります。
ほぼ2MW/m2となります。
⑤着火した化石燃料(液体)の路面上への拡散制御のための路面勾配と排水構造。
その他諸々の条件が加味されますが、設計上、専門的常識的に安全率を含んだ車両の火災規模はどの程度が妥当でしょうか? この設計条件について代表的報告書は世界道路協会(WRA)PIARC1999年(Fire and Smoke Control in Road Tunnels)に詳細な調査研究がまとめられている他、海外では膨大な研究文献が見られますが、日本では十分な調査研究がおこなわれていません。
一般に普通貨物自動車に「危険物」に該当しない大型普通貨物車が単独でトンネル内で単独火災事故を起こした場合でも50MW-100MWを超えます5)、6)。これは乗用車
程度の複合事故でガソリンの路面への拡散面積が25m2を超えれば単位時間当たり50MWの熱出力を超えることになるのです。現在欧州のトンネル群では50MW-200MW(オランダ 水底トンネル群、タンクローリー車火災を想定)の範囲での計画事例が多いようです。後述する台湾の施工中の国道9号線トンネル群では100MW の設計熱出力を想定しています。
2-3 換気設備
換気設備は本来、平常走行下において車道空間を通過するトンネル利用者への生理的影響および視程(煤煙透過率)への配慮から必要とされる換気量が定められてきました。一般的に数百メートル程度のトンネル延長であれば交通換気力によって必要とされる風量は十分に確保され、トンネル延長が伸びるに従い種々の機械設備によって風量を確保することとしております(平常走行時換気)。一方で、近年の自動車技術の進歩によってこれ等平常走行時の換気システムの容量低下の概念から、火災のような重大事故時に対応した火煙の制御システムへ設計の重点が移っています。
欧米および一部のアジア諸国においては換気設備設計の概念が完全に火災制御システム設計へと転換しましたが、依然として日本では平常時システムを主体としその範囲で、火災対応を行っており、安全設計の概念が欧米諸国と大きな差が生じているのが実態です。近年ハイブリッド車両の普及が促進していますが、化石燃料を搭載し、リチウムイオン電池も可燃物であることから、電気自動車を加えたこれらの状況がトンネル安全設計のための「設定熱出力の低減」にはつながっていません。
現在日本の長大トンネルにおける主要な換気方式は「立坑送排気従流式」です。
この方式は1985年に開通した中央自動車道恵那山トンネル上り線(岐阜県―長野県、全長8.650m)に初めて採用されました。この方式は1970年代にイタリアの長大道路トンネルで開発(Gransasso Tunnel, 約 12Km)され日本に導入された方式で、天井版を設置せず車道空間を車両と同一方向にガスを流し途中の立坑で新鮮空気と交換します。日本では恵那山トンネル以降、関越トンネル、東京湾アクアライン、首都高速道路品川線等多くの長大トンネルに採用されています。前述の台湾最長の道路トンネル、国道五号線、雪山隧道(全13.4Km)もこの方式です。
図5 東京湾アクアライン換気系統図 立坑送排気従流式7)
図5に東京湾アクアラインの模式図を示します川崎人工島(風の塔)と木更津人工島(海ホタル)が図1に東京湾アクアラインの模式図を示します。川崎人工島(風の塔)と木更津人工島(海ホタル)が換気立坑に相当します。
図6はドイツアウトバーン最長のレンステイグ(Rennsteig)トンネルの換気立坑模型です。欧州では1970年代末のイタリア、グランサッソ トンネル以来20年以上にわたって建設されませんでした。この詳細な理由は不明ですが、この間日本では恵那山トンネル以来多くの、関越トンネル、東京湾アクアライン、その他多くの 長大トンネルに採用され続けています。詳細は割愛させていただきますが、この換気システムについては種々の欠点が指摘されており、このトンネルが欧州でこの換気システムを採用する最後のトンネルと言われております。問題は種々ありますが大きな点は交通条件の変化に伴う換気負荷変動に対するレスポンスの悪さ(換言すれば動力効率の悪さ)、あるいは火災発生時に様な突発事件に対応する排煙応答制御の悪さです。
前述のとおり台湾でも、雪山トンネル以降の長大トンネルから全面的に転換されました。
図6 ドイツアウトバーン Rennsteig トンネル模型、
立坑送排気従流式、2002年開通 7.878m8)
立坑送排気従流式、2002年開通 7.878m8)
2-4 天井板
1)排煙機能概要
大規模火災発生などにおいての負傷、死亡事故の多くはトンネル内の死傷事故の多くは高温の火煙の吸引による気管損傷、呼吸障害が主要因と言われています。したがって火災時の排煙制御は道路トンネルの安全性能を左右する根幹的要因になります。基本的な計画コンセプトとしての主たる要因は下記に限られます。
✔ 煙を避難方向から隔離されるような排煙制御を行う。
✔ 発災空間を安全空間に比べて減圧領域を形成し安全空間への煙の流入を防止する。
✔ 高温化で作動可能な機電設備を設置する。
✔ 人間の避難行動、避難環境を整備する。等が挙げられます。
1990年代初頭より欧州を中心に換気装置の耐火対策(高温耐熱化)の開発が進み大規模トンネル火災に耐え得る排風機、排煙ダンパー、火災検知センサーと制御システムが開発され実用化に至っておりますが、残念なことに日本は大幅に後れを取っている状況です。(高速)道路トンネルの火災対策は海外のトンネルに比べて後れを取っていると認識せざるを得ません。
2)天井板崩落事故
このような状況の中、非常に残念なことに2013年12月、中央自動車道笹子トンネルの天井板が崩落し重大な死傷事故が発生してしまいました。
図7 笹子トンネル天井板崩落事故直後の構造点検9)
図8 ボストン市内トンネル天井板崩落事故10)
笹子トンネル事故に先立って2006年7月、米国、マサチューセッツ、ボストン市内のテッドウイリアムストンネルに接続する市内トンネル(開削工法)で、笹子トンネルと全く同様の天井板崩落により、通行車両が下敷きとなり、死者1名が犠牲となる事故が発生し、その報告が迅速に日本語によって(独・法 日本高速道路保有・債務返済機構12)なされていたにもかかわらず結果として生かされず笹子トンネル事故が発生してしまいました。この事故調査は米国運輸安全委員会によって事故原因、責任者を特定し補修されました。当然のことではありますが天井ダクトの必然性はそのままに撤去せず当初計画のとおりのシステムとして復旧しています。交通量の多い都市トンネルにあって天井ダクトは必要不可欠の装置です(図8、図9)。
図9 天井板アンカーの施工不良10)
3)天井板設置(排気ダクト)と高耐熱性大型排煙ダンパーの設置
2006年9月 スイス ヴィアマランネル(Viamala) トンネル(全長756m、対面通行 避難トンネル、換気設備無)で死者9名(全員ドイツ国籍)を出す大事故が発生しました(図10)。 このトンネルのように1000m未満の対面通行トンネルは日本の一般国道トンネルにも数多く存在します。
現在このような排煙設備も避難通路もない単純なトンネルで火災事故が発生した場合には安全計画の策定は非常に困難で、実際問題として打つ手がありません。スイス国内の過去のトンネル事故および欧州諸国のトンネル事故を教訓にしてスイス連邦建設局は全スイスの道路トンネルを対象に図7に示すような大排煙口付き天井ダクトおよび平行する避難トンネルの建設に着手しています。概ねトンネル延長450m以上の対面通行トンネルにおいて、図7に示す通り、天井排気ダクトと大排煙口の組み合わせにより火災発生時に車道空間を負圧領域に維持し非常口を開けた際煙が避難空間に流入しないような計画となっています。オーストリアにおける同種のトンネルの火災実験では火災発生後約90秒以内で排煙装置が作動しています。スイスは東京都の人口にも満たない1000万人以下の小国ですがアルプスを控え日本と同様多くの小規模道路トンネルが存在しますがこれらのトンネル群に交通量等のプライオリティーをつけつつ順次改善施工を実施しています。
図10 スイス ヴィアマラトンネル火災事故12)
図11 スイス連邦建設局トンネル安全対策13)
笹子トンネルのように4000mを超える長大トンネルで、不十分な設計、施工によって発生した天井板崩落事故後、マスメディアを通しての解説で、道路管理者、コメンテター、学識経験者?の方々が揃って“天井板が不要”だなどと報道する事例は日本以外で聞いたことがありません。結果、日本全国レベルで天井板の撤去が進行しているようです。
むしろ世界のトレンドは天井板設置(排煙ダクトの設置)の方向に動いているのです。
図12はスイス、ゴットハルドトンネル火災事故後の天井部高耐熱排煙ダンパーを示します。排煙口サイズは3mx2m、トンネル軸方向100m間隔で設置されています。
図12 スイスゴットハルドトンネル大排煙口(耐熱温度400℃以上、ステンレス製)14)
4)天井版の構造
換気ダクトのための天井版の構造は日本ではアンカーボルトとハンガーロッドによる吊天井方式ですが欧州の山岳トンネルでの在来工法、NATM工法などによる馬蹄形断面では図13に示すようなスライディングフォームによるRC現場打ちコンクリート施工によって築造されます。さらに側壁部両端は専用の樹脂材料による可動状態とし、アーチ形状に成形されます。スラブをアーチ状に施工することによって自重による内部応力を側壁部へ伝達させ構造的に有利になるうえ、火災発生時に下面からの火炎による加熱に対して熱分布が平面に比べて均等に分布され、コンクリート素材の耐火性能からも有利になること16)が判明しています。
換気ダクトの天井スラブを設置すると天井下面と大型車車体とのクリアランスが近くなり、車両の通過台数の周期による風圧による上下方向繰り返し荷重を供用中常に受け続けます。送排気ダクトの垂直仕切り壁についても換気制御による送気ダクト、排気ダクトの全圧差によって常時送気ダクト側から排気ダクトへ大きく変動する横荷重が作用して、います。これらの風圧力については定量的に把握され、ダクトの構造設計に反映されています。結果として高剛性の構造にならざるを得ないのですが、笹子トンネルの建設当時は自重、作業荷重に加えこれらの風圧による繰り返し荷重による疲労劣化、等は設計に考慮されていませんでした。
図13(a) アールベルグ 道路トンネル標準断面15)
図13(b) アールベルグ道路トンネル天井スラブ施工状況。
ダクト中央部の吊材は型枠保持のための仮設材。
最終的には厚さ約20cmの現場打ちコンクリート壁で構築15)。
ダクト中央部の吊材は型枠保持のための仮設材。
最終的には厚さ約20cmの現場打ちコンクリート壁で構築15)。
5) 台湾 国道9号線東部海岸トンネル群
従前記述いたしましたが、現在台湾最長の雪山隧道の立坑送排気式従流式は種々の問題点が指摘され以降の新設の長大トンネルからは天井排気ダクトを有する集中排気従流式に変更されました。
図14 非常時換気運用模式図16)
台湾東部海岸沿線の国立公園区域で急峻地形の国道9号線(2車線x2本)での地形的最難関施工区間で工区延長38.4KMは8か所のトンネルと橋梁で連結されトンネル単独では最長7900mトンネル、総延長は23.4KM(工区延長の60%)に達します。これらのトンネル群で延長500mを超える各トンネルには天井版が設置されます。
図15 標準断面16)
この方式では天井部は排気ダクトのみで新鮮空気は両坑口から排気口までの区間入り口からは順風、出口からは逆風状態で流入します。この方式は重メンテナンス時においても火災安全性の確保も可能なことも大きな利点です。
このプロジェクトは現在台湾最大規模のトンネル建設事業で2022年頃の開通を目途に鋭意建設が進行中です。
2-5 水噴霧設備(スプリンクラー設備)
日本の道路トンネルの安全設備の大きな特徴として長大トンネルへの水噴霧設備の設置が挙げられます。
図16は日本の代表的水噴霧設備システム概要を示します。2016年現在おそらく150か所以上のトンネルに設置されているものと思われます。
一方で海外のトンネルで水噴霧設備が設置されているのは私の知る限り、韓国、中国、台湾 (見直し中)の3か国です。この国々は(2005年当時)日本の技術指針を強く意識して編纂された経緯があるため日本の影響を受けているものと想像されます。
東京湾アクアライン(日本で1か所)、米国の都市トンネル群 と オーストラリア では泡噴霧設備が設置されていますが膨大な建設、維持管理コストが要求されます。これらを総称して固定式火災抑制装置(FFFS)と称しています。欧州各国のトンネルにはこれらFFFSは基本的に設置されていません。現在検討中のスウエ―デン、ストックホルムバイパスに水噴霧設備の導入計画があり、今年スウエ―デン道路局より直接相談がありました。2017年5月にも再度議論を行う予定です。日本で設置されている反面、国際的にFFFSが消極的なのは一部冒頭より繰り返しになりますが以下の理由によります。
①トンネル火災では一般的に、車両本体および積荷が燃焼対象物であるのには自明の理ですが、
日本では道路トンネル火災の燃焼対象物が規定されていません。即ち計画にあたって
「何が、どの程度の規模で燃えるか?」が現在に至るまで議論されていませんし
指針にも明記されていません。
日本では道路トンネル火災の燃焼対象物が規定されていません。即ち計画にあたって
「何が、どの程度の規模で燃えるか?」が現在に至るまで議論されていませんし
指針にも明記されていません。
②危険物積載車両の通行については各国で規制があります。
③国際的議論の場で半ば常識化しているのは「全ての通行車両は化石燃料」を搭載している。
化石燃料は液体であるという安全計画上のいわば「常識」です。
化石燃料は液体であるという安全計画上のいわば「常識」です。
④即ち、安全計画上、「化石燃料が車両搭載物質では最も熱出力が高い」との解釈です。
⑤化石燃料が事故による車体損傷で路面に漏洩、拡散した場合、空気との接触面積で熱出力が支配されます(2MW/m2)。
⑥このため液体拡散制御のための路面勾配と排水構造の設計は熱出力抑制のためのポイントになります。
日本では②以外は十分に検討した公開文書は見られません。
即ち、水噴霧設備を稼働させると、
✔ 油火災に散水すると水蒸気爆発の可能性(天ぷら油火災に水は厳禁)が生ずる。
✔ 水噴霧によって煙が冷却され路面付近に下降し視界を遮り、避難環境を阻害し、
吸煙による気管障害の恐れも生じます。
吸煙による気管障害の恐れも生じます。
✔ 水膜の上に着火した油膜が浮遊し火源の拡散促進につながる。
✔ 維持管理、運転に伴う過失により道路管理者は刑事罰を受ける可能性がある
(1979年日本坂トンネル火災事故)。等々。
(1979年日本坂トンネル火災事故)。等々。
図16 日本の道路トンネルの水噴霧システム概要17)
一方で泡消火設備は航空機火災、石油施設火災等で常用され、油火災には有効ですがトンネルのような閉鎖空間においては、冷却による煙の下降は生じます。加えて設置費および定期的泡原液の交換などの維持管理費がかさみコストメリットを見出すことができません。極論すれば火災車両の物的損害は安全計画上大きな要素ではなく消火しなくても良いのです。
したがって近年の道路トンネルの安全対策として、構造体の耐火対策、機電設備の高耐熱化、非常口設置間隔の縮小等、社会資本としてのトンネル施設の保護(幹線道路と物流の確保)及びトンネル利用者の生命の安全確保を中心に議論されているのです。
3 国際化とその業務
3-1 私自身の事
1964年東京オリンピック開催のための道路網整備のため国道246号の上部とJR、東横線を跨ぐ首都高速道4号線のPC片持ち梁施工の現場を見ながら大学へ通いました。ある時、学生時代その施工法に大変興味を持ち、ある時現場事務所を訪問し設計会社を聞き出し念願の千代田コンサルタントへ入社いたしました。大学時代もコンクリート研究室に所属し大変いい思い出も作ることができました。現緑土会会長、草柳俊二氏も同期です。入社後、東名高速道路川音川橋梁(大井松田IC近く)で現場経験も致しましたが、1年にも満たないうち、私にとっては全く予想外のことに、社長命令で東京駅八重洲口下の首都高速道路八重洲トンネルの設計業務担当を任命されました。当時の開削工法による都市型道路トンネルにおいては、構造設計、施工関連の技術者は十分に確保されていましたがそれより上流側の換気設備、換気所(塔)その他付帯設備の専門技術者は社内外に皆無の状態でした。道路トンネル計画はこれらに対する深い理解がないとトンネル断面を含む全体計画が策定できません。そのため、当時の社長は私のため昭和43-44年頃欧州(デンマーク、オランダ)への短期留学を許可し、さらに私への個人教授のため関門海底トンネルの換気設計を担当した九州大学佐藤雄二教授(当時化学機械工学科、後に九州産業大学学長)をわざわざ東京の本社に約3年間にわたって定期的に技術指導に招いてくださいました。本当に有り難いことでした。
このことによって私の進路は空中の構造物から地下構造物へ180度転換いたしました。以来40歳(1985年)ころまでの18年間はひたすら技術的研鑽に励むとともに、欧州各国へのチャンネルを維持するための技術交流を欠かさず、更なる50歳までの10年間は海外との連携強化、50歳以降は自立して海外業務に専念したいと思うようになりました。結果として、1998年の東京湾アクアラインの開通まで東京外環などを含む本当に多くの主要な日本の長大トンネルの設計検討、委員会活動に参加させていただきました。それらの日本国内の大規模プロジェクトが一段落し、21世紀(2001年3月31日)に千代田コンサルタント(56歳)を円満退社し、同年4月から個人事務所を設立し、台湾、中国、韓国、欧州各国の業務を経験し現在に至っております。
3-2 国際技術交流
1)設計施工雑感
海外におけるコンサルタント業務は強い権限と広範で深い技術力をもってプロジェクト全体を組織的に運用する能力が求められます。即ち発注者側からしてみれば、技術指針等も十分に整備されていない(或いは整備の必要のない)トンネルのような特殊構造物であるからこそ広く最新の知見を有する有力なコンサルタントに発注するのです。
一方詳細設計―施工を担当するエンジニアリング会社には全体価格も含めより良い構造物を将来の遺産として残すため別な切り口からの知見を期待しているのです。
このことは日本から見ると国内業務のように縦割り式に細分化された契約と異なり、広域的、組織的、数年間にわたる長期的、且つ若干曖昧さ(柔軟性)を残した契約とならざるを得ない場合が儘あります。この実態が建設紛争の火種になっている場合が少なくありません。換言すれば、コンサルタントレベルでの設計図書の編集の仕方も全く異なり、特に工事境界(契約範囲)が曖昧になりがちです。このため、エンジニアリング会社からのプロポーザル提出時にコンサルタント側との十分な意見交換が大いに必要となります。
日本企業の国際紛争の事例として、契約書への理解不足、誤解、発注者、コンサルからの指示が曖昧あるいは頑固、次の仕事の展開に支障をきたす、等の不満も漏れ聞きます。これらの解釈の違いが大きな採算ベースの問題として表面化するのです。
2)国際会議と日本からの論文提出
私個人として過去多くの国際会議に参加し、多くのセッション座長を経験してきた印象では、日本の論文に常々大きな欠点があると感じています。例えば、2017年世界最大の地下空間国際会議(ITA-ITES, Bergen, Norway)への提出論文について国際委員の立場として日本からの数本を含む18編の査読を2016年9月末まで行っていましたが、他の例に漏れず、その中で正直なところ日本のアブストラクトはあまり魅力を感じませんでした。それは主として以下の理由によります。
✔ 論文の内容が「現在進行形」ではなく、「過去形」で「固有名詞を含む日本のローカルカラー」が強く出すぎている。プロジェクトが完了した後の過去形表現の「オフライン論文」、欧米の優れた論文は現在進行形の「オンライン論文」。即ち、学会への論文提出とプレゼンテーションによって広く意見、批判を戦わせより改善されたプロジェクトにしてゆくための進行形の状態で提出されます。
✔ 国際的な技術傾向あるいは「読ませる・興味を持たせる」表現が不足している。
即ち国際的に利用されることを意識していない。
✔ 論文著者が多すぎ基本技術の所属が不明確
✔ 英語での表現力が不十分である、等々
これ等は技術情報の保持と属性、企業事情その他種々の日本的背景があるものと考えられますが真剣に議論すべきでしょう。
3)日本からの国際進出と技術交流
国際的なコンサルタントの立場から見た、エンジニアリングとしての最良の解決策はそれぞれの地域の歴史、国民性、社会、財務状況などによって異なります。このことがサイエンスとの大きな違いです。即ち、ODA無償援助などを別にすれば日本の基準(規準)、指針などの技術関連文書をそのまま海外に転用するには無理があります。加えて、長大トンネルのような特殊構造物はそもそも指針などないのが普通です。さらにあったとしても日本のような細部にわたる技術基準は最新の技術革新への対応を遅らせるとの考え方が強くあり、明文化しない事例も多くあります。
即ち、細部にわたる規準、指針等の整備は国を挙げて統一規格の社会インフラを整備するのには適しているかもしれませんが各時代に見合った最適な社会基盤を整備しようとすると場合によっては障害となります。一方で日本国内ではすべての関係者がこれらの文書に全面的に準拠しているのも事実です。
基本的政策として、欧米諸国、東南アジア諸国の発注者の要求として「世界最先端の社会インフラを最良の予算で整備する」との基本認識があります。いい意味で欧州各国、台湾など私の関係したプロジェクトでは“その度毎に”世界の知見を取り入れ「モデルチェンジ」を行っています。今や巨大プロジェクトのすべてを一国の技術で網羅することはできません。加えて、「横並び」・「過去の実績」等後ろ向きの議論は魅力的には映りません。コンサルタント、エンジニアリング会社の技術者は経験の上に立つ広い知見と深い技術力は学会等を通じて広く発信し続け世界の人々がそれらの情報に触れて、その評価を決定づけます。エンジニアは常に進歩することを宿命づけられているのです。世界各地で頻繁に、「カファレンス」、「シンポジウム」、「ワークショップ」等、名前は違っても国際的技術交流が盛んに行われているのはそのためです。
図17 江西省交通科学技術研究院での特別講義(左奥が私、右奥は通訳)18)
2009年世界銀行(ワシントンD.C)との契約で湖北省、江西省、安徽省の高速道路トンネル70座(中国の呼称)についての設計評価の業務を実施いたしました。このプロジェクトのため世銀から派遣されたのは、日本―トンネル計画(私)、カナダ:環境、フランス:道路・交通、オーストラリア:構造、と、ニュージーランド人の世銀コーディネータの5人のチームでした。図17はその一環として中国、江西省交通科学研究院での特別講義の様子です。この検討会には米国ワシントン州、カリフォルニア州道路局から中国系米国人技術者も参加しました。
図18は今年2月台湾で台湾北部中央山脈を横断する世界最大最長(計画延長22Km)の道路・鉄道の完全2層構造トンネル(超大断面NATM工法)の技術的可能性について、限定された技術者による検討会が開催されました。このプロジェクトは2015年秋(前、馬 英九総統時代)に起案されましたが、世界的に類似事例のない大規模構造物に関する一般的知見はありません。現在進行中の長大交通トンネル(Traffic Tunnel)の安全計画に関連して画期的な成果を挙げている欧州から4人の専門家を台湾に招聘いたしました。台湾は国際政策上(中国との関連において)微妙な立場にあり、台湾政府から各国に正規の(公式)依頼文書に代わって当方からの「私的文書」依頼文書によって実現いたしました。専門家4人はすべて公的機関に所属し、スウエ―デン火災研究所: SP(交通トンネル火災、燃焼工学)、フランストンネル研究所CETU(トンネル安全計画、担当)、ノルウエー工科大学 NTNU(地下空間避難、人間工学)、オーストリアグラーツ工科大学TUGRAZ(換気、流体、熱環境解析),日本から私(写真前列中央)、他の方々は台湾交通部技術系幹部職員、大学研究者、(財団法人)コンサルタント技師長などの方々です。台湾側からの多くの質問に対する即答も含め、全て英語での対応で率直な意見交換を丸日2日間にわたって行いました。
図18 台湾 技術検討会 (2016年2月 前列中央左から6人目が私、後列中央4人が欧州から)
結論は純技術的には総合的に建設可能との結論を得て現在最終の報告書の編纂を急いでおります。このプロジェクトは膨大な建設、維持管理費用が見込まれるうえ、水源涵養林保護区域を通過するため国民の合意形成も重要です。台湾では現在、蔡英文総統、政府による政策判断を待っている状況です。この事例のように政策決定上のかなり上流側の時点で我々を含む第三者を交えた検討会を行うことは海外ではさほど珍しいことではありません。
海外においては既にだいぶ以前から、国際的に広くプロポーザルの提出を求め、自国に適した最良案を採択する方法をとるようになりました。最良案の選択の方式は各国によって異なりますが、プロジェクトごとに「ある種のモデルチェンジ」が通例となりました。
したがって各国のプロジェクトに対応したコンサルタント、エンジニアリング会社からのプロポーザル提出にあっては、基本的要求仕様に対応しつつ、より高品質で低価格、即ち、応用力豊かな最高の技術力を発揮することを求められます。
4 終わりに
私の知る限り、日本の公共技術の実施においては、国、公共企業体が編纂した文書に適切に従うことが求められます。発注者、コンサルタントもある面柔軟性を欠き自らの考察、コンセプトを十分に発揮しえない状況にあるものと感じます。換言すれば指針、便覧等の関連文書に厳密に準拠しないこと契約も成立しない状況になりました。
日本では税金等投下公益資金に対応する均等な(質的)投資効果整備が必要との行政方針から、膨大な内容の文書技に基づく業務になりがちであり、技術革新に基づく質的向上をある意味阻害する状況がそのまま結果としてのガラパゴス化に強くつながっているように思われます。
日本の道路トンネルの安全性に関する現状について、数十年来基本姿勢は変わらず、大きな技術革新はそのままに、小幅な改革に留まり、他国との距離感が増加しています。これらの事実を認識している一部の関係者もいらっしゃいますが、多くの方々の「国際情報不足」、「対費用効果に関する疑問、即ち公共事業の予算規模」、「無関心」、で、人命尊重のコンセプトは透明感をもって構築されてはいません。特に欧米先進国に比べてトッラック輸送への依存度の高い日本では今後とも確実に発生するトンネル内重大事故に対する確率との関連から安全にかかわるコストの議論は避けて通ることはできません。 これ等、「コスト(with)安全性」の議論は世界共通的に存在する大きな課題である一方で、国民の血税を受けての公共事業が実行されます。そのため 『「1円でも1ドルでも安く」との命題を受けつつ、その時点での最高の技術水準をベースとした安全安心で適切な社会資本の整備」』 は世界の共通認識です。
海外プロジェクトに進出しようとする場合には「日本と海外との文化風土の違い」を理解し、同じテーブルで議論、技術交流をするため、即ち同じ土俵の上で勝負する世界にしていかなければなりません。現在のところ私の専門とする分野では日本は欧米先進国と対等に渡り合えるだけの技術力、技術情報を持ち合わせていません。
今後、技術開発、国際交流とコミュニケーション能力の向上、促進に大きな努力がなければ結果として「浦島太郎」になってしまうとかなり深刻に考えています。
参考文献
1)、15)M. Bettelini, H. Neuenschwander,A. Henke Lombardi Engineering Ltd.M. Gagliardi, W.
SteinerGotthard Tunnel Management. THE FIRE IN THE GOTTHARD TUNNEL OF OCTOBER 24, 2001
2) The Mont Blanc Tunnel Disaster
http//www. Landroverclub.net/Club/HTML/MontBlanc.htm
3) 台湾区 国道高速公路管理局提供
4) 産経WEST 2016年3月17日
5) 例えば、 M. K. Cheong、 M. J. Spearpoint& C. M. Fleischmann
“Design Fires for Vehicles in Road Tunnels”
International Conference on Performance-Based Codes and Fire Safety Design Methods, Auckland, New Zealand, pp.229-240, 2008.
6) 例えば、Eureka Project EU 499 Firetun. Fires in Transport Tunnels, Report on full scale test, Research
project conducted by 9European countries 1995.
7) H, Iwata. Y, Ota. Tokyo-Wan Aqualine. Experience of Traffic and Safety
1st International Conference on Traffic and Safety in Road and Tunnels, 28-29
May 2001, Hamburg Germany.
8) Rennsteigtunnel (Christiane-Tunnel)Bauabschnitt Tunnel Alte Burg - AD Suhl
www.tri-c.de/Die_Autobahn/Die_Bauwerke/Tunnel/Rennsteig/rennsteig
9) トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会報告書平成平成25年6月、国土交通省
10) Boston, Massachusetts July 10, 2006 ACCIDENT REPORT NTSB/HAR-07/02 National
Transportation Safety Board PB2007-916203
11) 欧州の有料道路制度に関する調査報告書(平成20年4月)第6章
独立行政法人高速道路保有債務返済機構
12) Niells Peter Hoj HAZARDS IN TUNNELS Fire Protection and Safety Measures in Rail Road
&MetroTunnels October 2, 2006, Warsaw, Poland
13) K, Kovari, F, DescoeuresTunnelling in Switzerland Swiss Tunnelling Society
ISBN3-9803390-6-8
14) Y, OTA 、K, Horiuchi The study on Concrete Analysis for Road Tunnel under the Incident of
fire.fib International symposium 2002 OSAKA, Japan
15) Der Arlberg Straßentunnel. In: Das Autobahnnetz in Österreich
BAU DOKUMENTATION 1981、Arlberg Straßentunnel.Aktienngsellshaft Innsbruck。
16) C, Lin. Y, OTA Safety concept for the East Coast Freeway Tunnels in Taiwan.
3rd International ConferenceTraffic and Safety in Road Tunnels – 18-20 May 2005 in Hamburg
17) Standard drawings for WSS. Japan Highway Public Corporation. April 2003
Y, OTA, M, YOKOTA. “Present Status of Sprinkler Systems for Japanese long road tunnels” National Fire Protection AssociationWorld Safety Conference and Exposition. Tunnel Fixed Fir Fighting System Workshop
Sponsored by the National Fire Protection Association (NFPA)
June, 2005 Las Vegas, Nevada, USA
18) 江西省交通科学技術研究院ホームページから(www.JXJTKY.COM)
以上
本記事pdf版は こちら へ。
0